杉無垢床板と化粧庇

金指原の家も、本格的に大工工事が始まり、日々、現場の様子が変化するようになってきました。

現場が、少し遠方ということもあって、だいたい1週間ごとに現場に顔を出すような感じなので、現場に行く度に表情が変わっています。
今までの、スローなテンポとはうって変わって、「仕事してるぞ!」って感じになってきました。
今年は平年よりも早い梅雨入りだったので、外壁が出来上がる前に梅雨に入ってしまいました。
小舞に思いのほか手こずってしまいましが、やはり、もう一ヶ月工程が前倒しだったら、ベストだったような気がしています。

ここ二週間の主な動きとしては、床板が張れて、室内の空間構成がはっきりしてきたことと、庇が取り付いて、概観の構成がほぼ出来上がってきたこと。
あとは、どんどん、お化粧をしていく作業といった感じになっていきます。



床板には、杉の無垢厚板を使用。
材木屋さんに注文して、指定の寸法で挽いてきてもらいます。
建設地の浜松市は天竜杉の産地ということで、地場産を使用しました。
あくまで、設計価格ですが、建材メーカーから販売されている薄~い化粧板が貼ってある合板フローリングよりも、だいぶ安く購入できました。

現在、国産の杉材(一般的な木材は材種を問わずなのでしょうが)は価格が低迷していることもあり、10年、20年前に比べると、タダ同然みたいな価格といった印象すら受けてしまいます。そういったこともあり、(あくまで、節ありの材料を使用するという前提ですが)工場で余計な加工をしている材料と比べて、無垢材に割安感を感じます。設計者としてはうれしいことですが、このままでは、本当に日本の林業は立ち行かないという危機感を受けてしまいます。


2階の床を下から見上げたところ。

計画当初、この家はローコストを追求していたので、2階の床板が、そのまま1階の天井になる部屋が多くあります。
見え方としてこんな感じ。
床板と梁だけのときは非常にすっきりしていますが、工程が進んでいくと、非常に悩ましい設備の配線が登場してきます。(最近は設備の種類も増えてきているので尚更)
そういったものをすっきり隠したいときは、床を二重にするなどしたほうがいいのですが・・・。
そうすると、コストダウンにならないし・・・。
悩ましいところです。



庇もできてきました。
外壁下地が土壁なので、腕木で持ち出す庇にしました。
ということで、どうせなので化粧の庇に。
杉板張りの外壁に、セメント系の庇だと、意匠的にも微妙って感じですし・・・。
垂木を省略して、少しでも材料と手間を少なくしたつもり。

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ウッドロング・エコ

木部の保護塗装に「ウッドロング・エコ」というものを使ってみました。


こんな袋に入ってます。

今回使ったのは、2階の軒裏と梁の外部に出ている部分。
外部の木部の塗装をどうするか?
実は、いつも迷います。
特に、足場を組まないと再塗装ができないところは、塗るべきなのか?塗らざるべきなのか?
浸透性のものも、塗膜をつくるものも、一般的には推奨される塗り替え頻度は3年以内程度。
なかなか、そのような頻度で塗り替えることないですよね。
そこで、何も塗らずに経年劣化に任せるか?
これも、なかなか勇気がいります。
”きれいに、経年劣化していく塗料があれば、是非それを塗っておきたい。”なんて考えてしまうのです。

で、このウッドロングエコ。
1回塗りでOKという手軽さ。
スウェーデンでは、60年塗り替え無しの実績ありという優れもの。(ただ、新築時の外観を維持してというのとは、ちょっと違うようですが・・・。また、日本の用は高温多湿の地域では、木材の腐朽サイクルは速い傾向にあるので、そうはいかないと思うところもあります。)

原材料は、ハーブ・樹皮・鉱物などの完全天然素材でつくられているとメーカーは申しております。(特許を取得せずに、製法を公開していないということで、詳しいことは企業秘密だそうで、本当に原材料がそのとおりなのかは図りかねますが・・・。とりあえず、このような”安全データシート”なるものが添付されているので、信用するしかないか・・・。)


外袋を開けると、こんな状態で内袋に入っています。
これで20g。
3.8リットルの水で溶かして、14~18?塗れるとのことです。(鉋がけした針葉樹は、もっと伸びがいいみたいです。)


バケツに溶かすと、こんな感じ。
ハーブのいい香りが漂ってきます。
木のくずみたいのが入っている必要があるのかどうかは、疑問ですが・・・。


塗ると、緑色がかった色になります。
左側が塗装前、右側が塗装後。
杉に塗った場合、白太の部分は薄緑色、赤味の部分は濃いグレーのような色になる傾向が強いようです。
吸い込みやすい部分と、吸い込みにくい部分で、かなり色の違いがありますが。


完了。

このあと、1週間程度、風雨や太陽光線にさらされると。銀白色に変色していくそうです。 ←銀白色になるのはヒノキなどの場合のようです。針葉樹でも杉の場合は茶色に変色して、経年劣化で茶系が明るくなっていくという感じでしょうか。木に含まれる成分や、吸い込みの度合いによって色目がかなり違ってくるようなので、試し塗りをして確認することをお勧めします。

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羊毛断熱材

ただいま建設中の「金指原の家」では、羊毛断熱材を使用しています。


こんなの。
現場においてあると、思わず寝転がりたくなります。


住宅用の断熱材と一口に言っても、いろいろな種類のものがあって、まだまだ僕の知らないものもたくさんあるのでしょうが、僕の知る限るにおいては、断熱性能、コスト、施工性の面から、この羊毛断熱材が最も優れているのではないかと思っています。
現在、日本国内に羊毛断熱材を供給しているメーカーは数社あり、ウール100%のもの、ウールとポリエステルを混合したもの、リサイクルウールを使用したものなどが販売されていますが、金指原の家では、コストと施工性から、ロールタイプの「ウールブレスV-60」という製品を使用してみました。バージンウール70%とポリエステル繊維30%が混合されたもので、これが21mのロールになって現場に搬入されます。
つきつめればバージンウール100%の製品を使いたいところなのですが、製品決定にはいろいろなハードルが存在するもので、その落ち着きどころがウールブレスV-60といったところです。

この羊毛断熱材、既に購入した一部は上棟のときに屋根に挿入済み。(こちら参照
今回は、残りの分を壁に入れます。
ところが、金指原の家は真壁土壁なので、断熱材が入るスペースはわずかしかありません。そこで、60mmの断熱材を半分の30mmに割ることにしました。
そもそも、「土壁に断熱材を入れるべきなのか否か?」散々迷ったのですが、とりあえず公庫基準の断熱性能は満たしておくほうが良いだろうということで、壁の熱貫流率1.29W/m2・Kを満たすには、どうしても断熱材を入れなければいけないという結論になったというわけです。(ちなみに、今回の仕様で壁は0.899W/m2・K)

私的には、断熱材を入れるのは不本意なのですが、実際に住む人に不便を押し付けるわけには行きませんので・・・。

で・・・
今回、断熱材を半分にする作業を行いました。

厚さのだいたい半分のところを狙って、2つにはがしていきます。
グラスウールでは、100%不可能です。
簡単にはがれます。・・・が、油断をするとすぐに片方が薄くなるので、気にしながらはがしていきます。

21mのロールが、だいたい1時間弱で半分の30mmになりました。

また、ロールにしておいておきます。
お施主さんと僕の共同作業でした。

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